てのひらの闇

いやー、いってきましたよ会社の女の子たちとウキウキランチ。賑やかでキャピキャピしててイキフンは楽しいんだけど、とにかく話が本当につまらない。だからプラマイゼロかな。じゃあ行かなくてもいいよね。そもそも俺は普段はお弁当なわけでさ。今日はランチに行くっていうから妻に「若い女の子たちとランチに行くからお弁当いらないです」って言ってきてるわけでね。うん、それから口きいてくれないよ。

そしてその後聞いたところによると、女の子たちも普段はおべんとなんだって。いつもリフレッシュルームで食べてるので一緒にたべましょうよ!って。
俺もなんだかんだ経験積んできてますからね。言わんとすることはわかってます。そんなん真に受けて一人でノコノコおべんと広げにいった日にゃ、一瞥して舌打ちして俺だけが知らない話題で盛り上がろうとするってわけでしょ?
いたたまれなくなってそれじゃお先、って姿を消したら「なんで一人で来た?」「それな」「じじいつかえねー」ってわけなんでしょ?
俺ってけっこうそういうのわかっちゃうほうっていうか。忖度だけでやってきましたみたいなとこあるんで。

仕方ないからトミーことイケメン君をお誘いしてね。いつも外食だろどうせって思いながら誘ってね。一応誘ったけどいつも外食なんだって!って女の子たちに弁解する練習してから誘ってね。そしたら彼も普段は自分でおべんと作ってんだって。なにそれかわいい。好きになっちゃう。

こうして社内でも一緒にお弁当を広げることになったんだけど、まあ、場所は変わっても話のつまらなさは変わらないね。しまいに30年前の合コンみたいなノリになってきちゃって、「血液型なに型?」なんて質問が飛び出す始末。O型だし射手座だしどうぶつ占いはクロヒョウだしって、くっそー、ぜんぜん聞いてねえなおまえら。

そうこうしている間にもトミーのおべんとが彼のルックスとは裏腹に、ごはんに卵焼きと焼き肉という荒々しい内容であるという話題になり、「もっと野菜食べなきゃダメ」だの「簡単でヘルシーな副菜のレシピ」だのでわいわいやり始めて、「じゃあもう私がトミーのおべんと作るよ!」て言い出すやつがいつ出てきてもおかしくないんだけど、それはそれとしてこの場における俺という存在の透明感、おわかり頂けるだろうか。